「UADのプラグインが良いのは分かった。でも、51個の中から10個だけ選べなんて、酷すぎる!」 Plugin Boutiqueで開催中の衝撃的なセール、UAD ‘Build Your Own Bundle’ Winter Mix Tape。あまりの選択肢の多さに、カートの前で数時間悩み続け、結局決めきれずにブラウザを閉じてしまった……そんな経験はありませんか?
安心してください、それはあなただけではありません。プロでさえ迷うラインナップです。しかし、視点を変えてみましょう。「良いものをなんとなく選ぶ」のではなく、「自分の作りたい音(ジャンル)に必要なものだけをピンポイントで選ぶ」のです。
本記事では、前回の「総合ガイド」から一歩踏み込み、より具体的で実践的な「目的別・最強バンドルレシピ」を3つ提案します。 あなたが「歌い手・Mix師」なら、この10個。「ビートメイカー」なら、この10個。 迷いはもう必要ありません。このリスト通りにカートに入れれば、あなたの制作環境は明日から劇的に「プロのスタジオ仕様」へと生まれ変わります。

もう迷わない!UAD「Build Your Own Bundle」目的別・最強レシピ3選
今回のセール(2026年2月26日まで)の最大の強みは、「捨て枠なし」で自分のワークフローを完結させられる点にあります。 通常のメーカー固定バンドルだと、どうしても「これは使わないな」というプラグインが混ざってしまいますが、Build Your Own Bundle (BYOB) なら10個すべてを「一軍」にすることができます。
ここでは、以下の3つのタイプに合わせて、Native動作(PC単体で動作)するプラグインの中からベストな組み合わせを厳選しました。
- Recipe 1: 歌い手・Mix師必見!「究極のボーカルMix」特化セット
- Recipe 2: ビートメイカーのための「Lo-Fi & アナログ質感」セット
- Recipe 3: 自宅で完結!「プロフェッショナ・マスタリング」セット
Recipe 1: 歌い手・Mix師必見!「究極のボーカルMix」特化セット
「歌ってみた」のMix依頼を受けている方、あるいは自分のボーカルを宅録しているシンガーソングライターの方。 あなたの悩みは「声がオケに埋もれる」「プロのような艶が出ない」「サ行が痛い」ではないでしょうか? このレシピは、録音された歌声を、世界基準のポップス・サウンドへと磨き上げるための「完全なボーカル・チェーン」です。
1. Avalon VT-737 Tube Channel Strip
まずは初手、プリアンプです。現代のR&B、ヒップホップ、そしてポップスにおいて「最も愛された音」と言えばこれです。 真空管のシルキーな倍音は、カサついたデジタル録音の声を、一瞬で「高級な音」に変えます。特にEQ部分のハイエンド(高域)の伸びは魔法のようで、ブーストしても決して耳に痛くなりません。まずはこれを一番段に挿して、キャラクター決定を行いましょう。
2. Manley VOXBOX Channel Strip
「Avalonとは違う方向性の艶が欲しい」という時のための、もう一つの選択肢です。 こちらはより濃厚で、中域にリッチな重心があります。バラードや、声を太く聴かせたい楽曲にはこちらがハマります。この2つを持っているだけで、どんな声質のシンガーが来ても「合うプリアンプがない」と困ることはなくなります。
3. 1176 Classic Limiter Collection
コンプレッサーの基本中の基本。ボーカルのアタック(歌い出しの突発的な音量)を整えるために使います。 UADの1176は、実機同様の「反応の速さ」を持っています。針が少し振れる程度に薄くかけるだけで、声の輪郭がクッキリと浮き出てきます。特に「Rev A(Bluestripe)」は、ロックな歪みを加えたい時に最高です。
4. Teletronix LA-2A Leveler Collection
1176の後段にこれを繋ぐのが、プロのエンジニアの黄金律です。 1176でピークを叩いた後の声を、LA-2Aが優しく包み込むように音量を均一化します。光学式特有のゆっくりとしたリリース(音が戻る時間)が、歌に永遠のようなサステイン(伸び)を与えます。バラードの語尾が消え入る瞬間の美しさは、このプラグインでしか出せません。
5. Pultec Passive EQ Collection
声を整えた後の「最終仕上げ」に使います。 ボーカルのおいしい帯域(100Hzあたりの太さと、10kHz以上の空気感)を、同時にブーストしてください。普通のEQなら音が破綻するところですが、Pultecなら魔法のように「太くて抜けの良い声」になります。ミックスの最後に「あと一歩何かが足りない」と思った時の救世主です。
6. Precision De-Esser
ボーカルミックスの最大の敵、「サ行(歯擦音)」を処理します。 多くのディエッサーは、かけると声が籠ったり、不自然になったりしがちですが、UADのPrecisionシリーズは極めて透明です。音質を変えずに、耳障りな成分だけを外科手術のように取り除いてくれます。
7. Hitsville EQ Collection
モータウン・サウンドを支えた伝説のEQ。 ボーカルの中域(ミッドレンジ)を調整するのに最適です。ボーカルがオケに埋もれて聴こえない時、このEQで少し中域を突いてあげると、不思議と声が前に張り出してきます。Pultecとは違う、より「音楽的な」アプローチが可能です。
8. Lexicon 224 Digital Reverb
80年代のヒット曲で聴ける、あの「広大でリッチなリバーブ」です。 ボーカルに薄くかけるだけで、スタジオの壁が消え去り、無限の空間で歌っているような感覚になります。特に高域の減衰(ロールオフ)が美しく、深くかけても声の邪魔をしません。
9. Capitol Chambers
「もっとナチュラルで、高級感のある響きが欲しい」ならこれです。 フランク・シナトラやナット・キング・コールが愛した、キャピトル・スタジオの地下にある残響室(エコーチャンバー)。プラグインであることを忘れるほどリアルな空気感は、バラードにおいて最強の武器となります。
10. Galaxy Tape Echo
最後に、ボーカルに「色気」を与えるテープエコーです。 リバーブだけでは声が遠くなってしまう時、このテープエコーをうっすらと足すことで、声に立体感と動きが出ます。フィードバックを発振させて、ダブ処理のような演出を作るのにも役立ちます。
この10個が揃えば、ボーカルミックスで「できないこと」はほぼ無くなります。あなたのMixへの評価は、間違いなく爆上がりするでしょう。
Recipe 2: ビートメイカーのための「Lo-Fi & アナログ質感」セット
次は、Logic ProやAbleton Liveでビートを作っているクリエイター向けです。 Lofi Hip Hop、Neo Soul、Boom Bap。これらのジャンルに共通するのは「質感(Texture)」の重要性です。 DAW付属の音源は「綺麗すぎ」ます。UADを使って、音を汚し、太くし、埃っぽい空気感を纏わせましょう。
1. Studer A800 Multichannel Tape Recorder
これは「エフェクター」ではありません。「土台」です。 キック、スネア、ベース、サンプルネタ……すべてのトラックの1段目にこれを挿してください。それだけで、デジタル特有の痛い高域が丸まり、低域がグッと持ち上がります。テープの種類や回転数(IPS)を変えることで、Hi-FiからLo-Fiまで自在に操れます。
2. Ampex ATR-102 Mastering Tape Recorder
Studerが各楽器用なら、こちらはマスター(2Mix)用です。 ビート全体をこのテープに通すことで、楽曲全体が「一つのレコード」のように馴染みます(Glue効果)。さらに、WoW & Flutter(回転ムラ)を上げることで、あのLofi Hip Hop特有の「揺れ」や「ピッチの不安定さ」を、極めて音楽的に作り出せます。
3. Verve Analog Machines
今回のリストの中でも特にユニークな、UADオリジナルの「汚し」ツールです。 様々なアナログ機器(テープ、真空管、カセットなど)のサチュレーション・カラーを、ワンノブで切り替えられます。「このスネア、なんか軽いな」と思ったら、とりあえずこれを挿してプリセットを回してみてください。数秒で「使える音」が見つかります。時短ツールとしても最強です。
4. Moog Minimoog
ビートメイクにおいて、ベースは命です。そしてシンセベースの王様といえばMinimoogです。 UAD版は、実機の回路を驚異的な解像度で再現しています。フィルターを閉じた時のあの太いサブベース、レゾナンスを上げた時の粘り気。サンプル波形では絶対に出せない「生きたベース」が手に入ります。
5. Opal Morphing Synth
UADが作った、アナログとデジタルのハイブリッド・シンセサイザー。 アナログモデリングの技術を活かしつつ、現代的なモーフィング機能を搭載しています。アンビエントなパッドや、浮遊感のあるリードサウンドを作るのに最適。プリセットも非常に即戦力で、インスピレーションの源になります。
6. Waterfall Rotary Speaker
もともとはハモンドオルガン用のスピーカーですが、これをギターやシンセ、あるいはボーカルにかけてみてください。 音が物理的に回転することで生まれる独特のモジュレーション(揺らぎ)は、コーラスやフランジャーとは一味違う、有機的なサイケデリック感を生み出します。Lo-Fiなエレピにかけると、一気に雰囲気が増します。
7. Century Tube Channel Strip
「AvalonやManleyは難しそう」という人のための、シンプルかつ極上なチャンネルストリップです。 マイクプリアンプ、EQ、オプティカル・コンプが一体化しており、操作は非常に直感的。しかし、プリアンプのゲインを上げた時の「真空管の歪み(サチュレーション)」は本物です。ドラムバスにかけて荒々しく歪ませたり、ボーカルにガッツを与えたりするのに重宝します。
8. Hitsville Reverb Chambers
モータウンの屋根裏部屋にあったリバーブ・チャンバー。 Capitol Chambersが「高級でリッチ」なら、こちらはもっと「生々しく、ガッツのある」響きです。ドラムやパーカッションにかけると、まるで目の前で叩いているような実在感が生まれます。
9. 1176 Classic Limiter Collection
ビートメイクでも1176は必須です。 特にスネアドラムに深くかけてアタックを潰し、リリースを最速にすると、あのHipHop特有の「バチン!」という炸裂音や、余韻が持ち上がった「ポン!」というサウンドが作れます。サンプル素材のキャラクターを激変させるためのサウンドデザインツールとして使ってください。
10. Pultec Passive EQ Collection
キックとベースのローエンド処理には、やはりPultecが欠かせません。 キックの60Hzをブーストし、同時にAtten(カット)ごくわずかに入れる。これだけで、キックの低域が引き締まり、かつ重厚になります。Lo-Fi Hip Hopの要である「太いボトム」を作るための必需品です。
Recipe 3: 自宅で完結!「プロフェッショナ・マスタリング」セット
「2Mixを書き出してみたけど、市販の曲に比べて音が小さい、薄い、広がりのない……」 その悩み、マスタリング専用のUADプラグインで解決できます。 iZotope OzoneのようなAIオートマスタリングも便利ですが、UADを使ったマスタリングは「音の品格」が違います。アナログ機材の名機をチェーンさせることで、楽曲に説得力と「プロの匂い」を付加しましょう。
1. Capitol Mastering Compressor
今回のセールの目玉の一つ。キャピトル・スタジオ秘蔵のハンドメイド真空管コンプレッサー(CM5511)を再現したものです。 マスタリング・コンプに求められる「音圧を稼ぎつつ、ダイナミクスを殺さない」という矛盾した要求を、魔法のようにこなします。通すだけでステレオイメージが広がり、音が前に出てきます。これ一つで、あなたの2Mixは「製品レベル」になります。
2. Manley Massive Passive EQ
マスタリングEQの最高峰。 普通のEQのように特定の周波数をいじるというよりは、楽曲全体のトーン(色調)を整えるためのEQです。高域をブーストしても決してキンキンせず、シルキーに伸びていきます。低域を足せば、部屋の空気が震えるようなリッチなボトムが生まれます。非常に重いプラグインですが、マスターに挿す価値は十分にあります。
3. SSL 4000 G Bus Compressor
通称「The Glue(接着剤)」。 数々のヒット曲のマスターバスで使われてきた伝説の機材です。ミックス全体をギュッとまとめ上げ、一体感を出します。針が少し(1〜2dB)振れる程度にかけるのがコツです。これを通すと、バラバラだった各トラックが「一つの楽曲」として聴こえるようになります。
4. Shadow Hills Mastering Compressor (※要在庫確認、なければAPI 2500)
UADのラインナップでも特に人気の高いマスタリング・コンプ。オプティカルとディスクリート(VCA)の2段構えでコンプレッションを行います。重厚感を出したいならこれです。 もしリストになければ、API 2500 Bus Compressorを選びましょう。こちらは「Thrust」回路により、低域のパンチを損なわずに強力に圧縮できるため、ロックやダンスミュージックのマスタリングに最適です。
5. Fairchild Tube Limiter Collection
真空管コンプレッサーの王様。 マスタリングで使う場合、Lat/Vert(M/S処理)モードで使うのが裏技です。サイド(広がりの成分)だけを軽くコンプレッションすることで、センターのボーカルやキックを邪魔せずに、部屋鳴りやアンビエンスだけを持ち上げ、ステレオ感を強調することができます。
6. Ampex ATR-102 Mastering Tape Recorder
先ほどLo-Fiセットでも紹介しましたが、マスタリング用途こそが本来の姿です。 1/2インチテープ、30ips(回転数)の設定にすることで、ハイファイでありながらテープ特有の「まとまり」と「奥行き」が得られます。デジタル完結のミックスに、最後の一筆としてアナログの魂を注入します。
7. A-Type Multiband Dynamic Enhancer
今回のバンドルで新しく追加された必殺技。 Dolby Aタイプのノイズリダクション回路を応用したエンハンサー(エキサイター)です。高域にかけると、EQでは出せない「きらめき」と「エアー感」が付加されます。ボーカルの息づかいや、ハイハットの輝きを強調する「隠し味」として最強です。
8. Precision Limiter
シンプルなブリックウォール・リミッター。 UADには珍しく色付けのない、透明なリミッターです。最後に音圧を稼ぐ(シーリングする)役割を担います。色付けはこれまでのプラグインで行っているので、最後は原音を損なわずにレベルだけを上げる、この実直さが重宝します。
9. Precision K-Stereo Ambience Recovery
マスタリング界の巨匠ボブ・カッツ氏が開発に関わった、空間調整ツール。 既存のミックスからアンビエンス(残響)成分だけを抽出し、増強することができます。「ミックスは終わったけど、全体的にもう少し広がりが欲しい」という時に、リバーブを足さずに自然な空間を拡張できる、魔法のようなツールです。
10. Sonnox Oxford Inflator (※リスト要確認)
もしリストに含まれていれば即ゲットです。音割れさせることなく、聴感上の音圧(ラウドネス)を劇的に上げることができます。 もしなければ、Standard Clipsのようなクリッパーの役割として、Sonnox Oxford Limiterなどを検討してください(※今回のリストはUADブランド中心のため、UADネイティブのラインナップを再確認し、入っていなければHitsville EQなどで代用し、音作りの幅を広げましょう)。
それでも余ったら?枠を埋めるための「隠れた名作」便利ツール
「レシピ通り選んだけど、いくつか既に持っているから枠が余った……」 そんなあなたにおすすめする、地味だけど効果絶大な「名脇役」たちを紹介します。
- Studio D Chorus: ボタンが4つあるだけ。それなのに、掛けるだけで音が豪華に広がる魔法の箱。シンセ、ギター、バックコーラスに。
- Pure Plate Reverb: シンプル・イズ・ベストなプレートリバーブ。操作に迷うことなく、瞬時に「あの音」が出ます。CPU負荷が軽いのも正義。
- PolyMAX Synth: 80年代のポリシンセ(JunoやOB-Xなど)の雰囲気を一台に凝縮したシンセ。レトロなパッドやブラスが必要ならこれ。
- Little Labs VOG (Voice of God): 低域をブーストするレゾナンス・ツール。キックやベースの「超低域」を、スピーカーを揺らすレベルまで簡単に持ち上げられます。
まとめ:自分のスタイルに合わせて「賢く」選ぶのが正解
51種類という膨大な選択肢も、こうして「目的」というフィルターを通してみれば、自分に必要なものが自ずと見えてきたのではないでしょうか。
UADプラグインは、どれも個性が強く、明確な役割を持っています。 「なんとなく評判が良いから」ではなく、「自分のミックスに足りないピースは何か?」と問いかけることで、この10枠は単なるプラグインの寄せ集めではなく、あなたの音楽制作を支える強固なシステムへと進化します。
歌い手なら、声を磨くセットを。 ビートメイカーなら、質感を汚すセットを。 エンジニアなら、最終的な説得力を出すセットを。
今回のレシピを参考に、あなただけの「最強バンドル」を構築してください。そして、手に入れた10個の武器を使い倒し、昨日までの自分には作れなかったサウンドを世界に響かせましょう。 セール期間は残りわずかです。迷いを超えて、決断する時が来ました。さあ、あなたのスタジオをアップグレードしましょう!

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